- 投稿日:2025年08月11日
- 最終更新日:2025年08月12日
【遺言書の専門家が回答】「自筆で十分」は危険?1,500件の相続現場で見た失敗事例|アルファの相続

遺言書を作成しようと考えた時、多くの方が最初に思いつくのが「自分で書けばいい」という選択肢です。多くの方とお話していると、遺言書に関するイメージを持っている方は少なく、手書きで自分で書くと思っている方がほとんどです。
しかし、相続の専門家としての立場から申し上げると、自分で作成するか専門家と一緒に作成するかの違いで、その後の遺族の対応は大きく変わります。
今回は、実際にお客様からいただいた質問をもとに、なぜ専門家が公正証書遺言を推奨するのか、詳しく解説させていただきます。
【Q】遺言書は自分で書けば十分だと思うのですが、わざわざ公正証書にする必要はありますか?
【A】結論から言うと、自筆証書遺言だけでは不十分なケースが多く、相続現場では「せっかく書いた遺言書が使えない」というトラブルが後を絶ちません。費用をかけてでも公正証書遺言を選ぶべき明確な理由があるのです。
自筆証書遺言の魅力と落とし穴

自筆証書遺言は、最も身近で手軽に作成できる遺言書として多くの方に選ばれています。最大の特徴は、思い立った時にすぐに作成でき、費用もほとんどかからないという手軽さにあります。
作成方法は比較的シンプルで、遺言書の本文全てを自分の手で書き、日付を記入し、署名・押印するだけです。2019年の法改正により、財産目録部分についてはパソコンでの作成や通帳のコピーの添付も可能になり、以前より作成しやすくなりました。内容を変更したい場合も、新しい遺言書を作成するだけで古いものを無効にすることができ、柔軟性が高いのも魅力です。
しかし、この手軽さの裏には注意すべきリスクも存在します。法律で定められた厳格な要件を満たさなければ無効となってしまう可能性があり、日付の記載漏れや不正確な記載、押印の不備などで、せっかく作成した遺言書が使用できなくなってしまうケースが実際に多く発生しています。
例えば、日付を「令和〇年〇月吉日」と記載した場合、具体的な日付が特定できないため無効となります。また、訂正方法にも厳格なルールがあり、単に二重線で消すだけでは不十分で、訂正印と訂正内容の記載の両方が必要となります。
保管の問題と検認手続きの負担

自宅などで保管する自筆証書遺言には、紛失してしまったり、家族に発見されなかったりするリスクがあります。さらに深刻な問題として、悪意のある相続人によって隠匿されたり、内容を改ざんされたりする危険性も否定できません。
相続が開始された際には、家庭裁判所での検認手続きが必要となります。この手続きには2か月程度の時間がかかり、その間は遺言書を使用した相続手続きを進めることができません。
法務局保管制度の可能性と限界

2020年7月に開始された法務局での遺言書保管制度は、自筆証書遺言の安全性を大幅に向上させた画期的な制度です。法務局保管制度の最大のメリットは、国の機関である法務局が遺言書を安全に保管してくれることです。紛失や隠匿、改ざんのリスクが排除され、遺言書の存在と内容が確実に保護されます。また、相続開始時の検認手続きが不要となり、相続人の負担が大幅に軽減されました。
保管の申請時には、法務局の職員が遺言書の様式面をチェックしてくれます。保管手数料も3,900円と比較的リーズナブルで、経済的負担も軽微です。
ただし、この制度にも注意点があります。遺言書の保管申請は必ず遺言者本人が法務局に出向いて行う必要があり、代理人による申請はできません。また、様式や記載方法について細かな規定があり、用紙のサイズ、余白の幅、文字の大きさなど、詳細な要件を満たす必要があります。また、相続後に検認は不要となりましたが、保管された内容が記載された遺言情報証明書を取得するには検認に必要な戸籍謄本等一式をそろえる必要があり、根本的には解決していません。
最も重要な点は、法務局では遺言書の形式面のチェックは行いますが、内容についての法的な検証や専門的なアドバイスは提供されないことです。遺留分への配慮や相続税対策、将来の手続きのしやすさなど、遺言書の実質的な内容については、別途専門家に相談する必要があります。

公正証書遺言が最も確実である理由

公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が関与して作成される遺言書で、最も確実で安全な方式として広く推奨されています。相続の専門家として多くの案件を手掛けてきましたが、トラブルが最も少なく、相続手続きがスムーズに進むのが公正証書遺言です。
公正証書遺言の最大の特徴は、その確実性にあります。公証人という厳格な役場の者が遺言者の意思を確認しながら作成するため、法的な不備が生じるリスクが極めて低くなります。作成時には証人2名が立ち会い、遺言者の本人確認と意思確認が厳格に行われるため、後から遺言の有効性が争われる可能性も大幅に減少します。
安全性の面でも公正証書遺言は大きなメリットがあります。遺言書の原本は公証役場で半永久的に保管され、遺言者には正本と謄本が交付されます。万が一手元の遺言書を紛失しても、公証役場で再発行してもらうことができ、隠匿や改ざんの心配も一切ありません。
相続手続きの面でも優れています。公正証書遺言は家庭裁判所での検認手続きが不要で、相続開始後すぐに金融機関や法務局での名義変更手続きに使用することができます。
一方で、公正証書遺言には費用がかかるというデメリットがあります。公証人手数料は財産額に応じて決まり、数万円から十数万円程度が必要です。また、専門家に依頼する場合は別途報酬が発生します。
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遺言書は「家族への最後の贈り物」ともいえる重要な文書です。大切な家族が困らないよう、確実で安全な方法を選択することが、何よりも重要だと考えています。
実際の相続現場では、自筆証書遺言で作成された遺言書が形式不備で無効になったり、内容が不明確で相続人間でトラブルになったりするケースを数多く見てきました。一方、公正証書遺言で作成されたケースでは、こうしたトラブルは格段に少なく、スムーズな相続が実現されています。
財産額や家族構成による選択の目安として、財産が比較的シンプルで少額の場合は法務局保管制度、ある程度まとまった財産がある場合や複雑な家族関係がある場合は公正証書遺言が適しています。
再婚されている方、お子様がいらっしゃらないご夫婦、事業を営まれている方などは、確実性を重視して公正証書遺言を選択されることをお勧めします。
アルファ行政書士事務所では、1,500件以上の相続案件を通じて蓄積した豊富な経験をもとに、お客様一人ひとりの状況に最適な遺言書作成方式をご提案いたします。初回相談は無料で承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。