- 投稿日:2025年07月04日
- 最終更新日:2025年07月08日
[相続事例]面識のない異母兄弟との相続を円満解決|アルファの相続
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相続手続きで困難とされるケースの一つが、面識のない相続人がいる場合です。
今回ご紹介するのは、60代前半の女性からいただいたご相談事例で、離婚により長年音信不通だった実父が亡くなり、面識のない異母兄弟がいることが判明したケースです。
相談者は自分が相続人であるかどうかさえ分からない状況からスタートし、相続人や財産の詳細が一切不明という困難な状況に直面されていました。
しかし、相談者の状況を丁寧に確認すること、相談者のご意向を尊重することで、約1年をかけて円満解決を実現することができました。
この事例は、複雑な家族関係であっても、戦略的なアプローチにより良好な関係を築きながら相続手続きを完了できることを示す事例となっています。
目次
相続人不明・遺産不明で困惑した相談者の状況

ご相談いただいた女性は、幼少期に両親が離婚し、母親に引き取られて生活してきました。離婚後、父親とは一切連絡を取っておらず、どこで何をしているのか全く分からない状況が長年続いていました。母親も既に他界されており、父親に関する情報を得る手段もありませんでした。
そんな中、突然父親が亡くなったという連絡が入りました。連絡をしてきたのは父親の知人で、実は父親が離婚後に再婚し、後妻との間に子供がいることも同時に知らされました。後妻の方も既に他界されており、相続人は相談者と異母兄弟の2名ということになります。
相談者にとって最も困惑したのは、自分に相続権があるのかどうかも理解できていなかったことです。役所でもらった相続に関する冊子を読んでも内容が理解できず、「何から始めればいいのか全く分からない」という状況でした。また、面識のない異母兄弟がどのような方なのか、どうやって連絡を取ればいいのかも分からず、大きな不安を抱えていらっしゃいました。
相続人調査と遺産調査で全体像を把握

ご相談をお受けした際、まず最初におこなったのは相談者が確実に相続人であることをお伝えし、安心していただくことでした。離婚をしていても、実の父親の子供であることに変わりはないため、相続権があることを丁寧に説明させていただきました。
しかし、相続を進めるためには正確な情報が不可欠です。そこで、戸籍調査と財産調査を徹底的に行うことから始めました。
戸籍調査では、被相続人である父親の出生から死亡までの全ての戸籍を収集し、相続人の確定を行いました。この調査により、相続人が相談者と異母兄弟の2名のみであることが正式に確認できました。また、後妻の方も既に他界されていることも戸籍上で確認することができました。
財産調査については、住民票に記載された住所地を手がかりに、周辺の金融機関への照会を行いました。現代の日本では、何らかのヒントがないと金融機関への調査をかけることは困難ですが、ゆうちょ銀行やみずほ銀行など主要金融機関に対して、可能性のある範囲で調査をかけました。また、不動産の有無についても登記簿等で確認を行いました。
この調査段階で約6ヶ月を要しましたが、最終的に預貯金と不動産(自宅)が主な相続財産であることが判明し、異母兄弟の連絡先と住所も特定することができました。
遺産分割協議を円満に進めた解決プロセス

調査が完了した段階で、次に重要となるのが異母兄弟との接触方法でした。ここで私たちが採用したのは、弁護士を介入させずに行政書士が中立的な立場でご相談者にアドバイスをするというアプローチでした。
この判断には明確な理由がありました。面識のない相続人に対していきなり弁護士を代理人として立てることは、確かに一つの手段ではありますが、いきなり弁護士が入ることで相手方に「完全に敵対している」という印象を与えてしまう可能性があります。弁護士は依頼者のために最善を尽くすことが職務であり、どうしても対立構造になりがちです。
しかし、今回のケースでは同じ親を持つ兄弟という関係性があります。相続を機に初めて知り合うことになりますが、将来的にも良好な関係を維持していくことを考えると、最初から対立的なアプローチを取ることは適切ではないと判断しました。行政書士として公平中立な立場であるため、関係性を重視した解決には最適でした。
実際の交渉は、ご相談者本人が異母兄弟のご自宅を直接訪問することから始めました。突然の訪問にも関わらず、事前にお伝えした資料をもとに丁寧に事情を説明していただき、調査結果の資料をすべて開示しました。相談者にとって公平な解決を目指していることをお伝えしていただきました。
異母兄弟の方からも相続について様々な質問を相談者にいただきましたが、調査資料については、変わりに私どもの方ですべて真摯にお答えし、不安や疑問を解消していただくことに努めました。
財産評価については、特に不動産の評価が重要なポイントとなりました。不動産の評価には市場価値、路線価、固定資産評価額など複数の基準があり、どの基準を採用するかによって大きく金額が変わります。公平性を保つため、市場価値を重視し、不動産会社による専門的な査定書を作成しました。
最終的に、不動産を売却して現金化し、すべての財産を2等分するという方針で合意に至ることができました。
相続手続き完了までの最終的な解決内容

遺産分割協議の結果、不動産は売却して現金化し、預貯金と合わせてすべての財産を相談者と異母兄弟で2等分することになりました。手続き費用については遺産から控除することで合意をする結果となりました。
その後、相続登記の実施、金融機関での相続手続き、不動産売却手続きを順次進め、約1年で全ての手続きを完了することができました。最終的な現金分割も無事に実施され、双方にとって満足のいく結果となりました。
この解決が成功した要因として、以下の点が挙げられます。まず、行政書士が中立的立場で相続手続きや調査に関する内容を丁寧にご説明をさせていただき、その後は相談者と異母兄弟とで真摯に向き合うことで合意にいたりました。さらに、将来の関係性を重視したアプローチを取ったことで、感情的な対立を避けることができました。そして、専門的な不動産査定により公正な財産評価を行ったことで、双方が納得できる分割を実現できました。
相続を円満解決できたお客様の満足の声

相談前の状況について、相談者からは次のようなお声をいただきました。「そもそも自分が相続人なのかも分からず、何をどうすれば良いのか全く見当がつきませんでした。面識のない異母兄弟がいると聞いて、どんな方なのか、うまく話し合いができるのか本当に不安でした」。
解決後には、「まさかこんなにスムーズに解決するとは思っていませんでした。最初は何も分からない状況でしたが、1年後には全ての手続きが完了し、異母兄弟の方とも良好な関係を築くことができて本当に良かったです」とのお言葉をいただきました。
特に印象的だったのは、「弁護士さんを通さなかったことで、血のつながった兄弟として今後もお付き合いできそうです。手続きの部分を全てお手伝いいただいたおかげで、最後まで円満に進めることができました」というご感想でした。単にコストを抑えられたということではなく、将来にわたる関係性を重視したアプローチの価値を実感していただけたようです。
複雑な相続を成功させる専門家からのアドバイス
本事例はお客様の状況を丁寧に調査すること、安易にいつもの手続きで進めるのでなく、お客様の望む相続後の状況も見据えた対応を意識しています。
まず、相続が発生したら戸籍と財産の調査を徹底的に行うことが不可欠です。正確な情報がなければ、適切な判断も公平な分割もできません。今回のケースでも、徹底的な調査を行ったことが、その後の円滑な進行につながりました。
次に、面識のない相続人がいる場合でも、いきなり法的手段に訴えるのではなく、まず対話の機会を設けることが重要です。特に血縁関係がある場合は、将来にわたる関係性を考慮したアプローチを取ることで、単なる財産分割以上の価値を生み出すことができます。
また、専門家の中立的な立場を活用することも効果的です。行政書士として相続手続きの状況から調査内容を丁寧にお伝えし、当事者間で対話の機会を設けていただいたおかげで関係性を悪化させずに解決したい場合には非常に有効です。
類似ケースで注意すべき点として、不動産評価は必ず専門的な査定を行うことが挙げられます。評価基準によって大きく金額が変わるため、公正性を保つためには市場価値に基づく適切な評価が必要です。また、相続人間の情報格差をなくすため、調査結果はすべて開示することが信頼関係構築には欠かせません。
最後に、早期相談の重要性があります。多くの方が「自分で調べてから相談しよう」となりがちで、相談までが遅くなるケースがあります。後回しにしてしまうと進める際の心理的負担や情報の整理も難しくなることがあります。
今回のように「何が分からないか分からない」ような状態でも一度専門家に相談すると状況がすぐに分かったり、その後の対応も見えてくることが多くあります。
相続は人生で何度も経験するものではありません。だからこそ、地域に根ざし、長期的な関係性を築ける専門家との出会いが重要です。江東区での相続に関するお悩みがございましたら、地域密着型のアルファ行政書士事務所にお気軽にご相談ください。
お客様一人ひとりに寄り添ったサポートで、安心できる相続手続きをお手伝いいたします。
